大典太光世の逸話

天正元年、室町幕府の終焉により、足利将軍家が所蔵する大典太光世を筆頭とする数々の名刀の所有者は織田信長となったとも、また、一説では、15代将軍足利義昭の出奔に携行され、のちになり義昭の庇護者となった豊臣秀吉に譲り渡されたとの逸話もある。

その後、秀吉から盟友前田利家へと渡った。そのさいにも一つの逸話が生まれている。利家の四女、豪姫が原因不明の病になったとき、利家は、秀吉から大典太光世を借り受け、豪姫の枕元に置いたところ、病はたちまち平癒した。

ところが、大典太光世を秀吉に返却した途端、病はぶり返してしまった。その繰り返しの三度目に、秀吉は大典太光世を利家に下賜した。

こうして大典太光世は、加賀前田家の家宝となった。大正15年、前田侯爵家は、継承してきた家宝の散逸防止のため、管理団体として公益法人育徳財団(現在の公益財団法人前田育徳会)を設立した。現在、大典太光世は財団の所有となっている。